3.不信

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席に戻ると、みちるから声を掛けられ、ドキッとした。 「なに?」 内心のドキドキを気取られたくないばかりに、少しつっけんどんな言い方になってしまった。 「さっき松浦さんに来客があったそうです。これを届けに来られました」 みちるが差し出したのは、忘れてきた書類封筒だった。もう来てくれたのか。 「その人は帰った?」 「はい、多分」 それを聞いて、ちょっと安心した。 「そう。ありがとう」 みちるから封筒を受け取り、中身を確認する。確かに、資料や私のメモ書きが揃ってる。本部長への報告書を作ってしまおうと、USBを探った。 『あれ?』封筒を逆さに振っても、書類以外出てこない。なんで? 私は記憶違いでもしていたのだろうか…。 念のため、バッグの中、中の物の中も確かめ、物を全部机に出して、立ち上がりバッグを逆さに振る。 「松浦さん…探し物?」 職場の人たちが驚いて見守る中、私は必死に探していた。でも、ない。 みちるに、必死の形相で問いかける。 「ねぇ、この封筒、開けた?」 みちるは少々ビビって、「いいえ」と、首を振り答えた。 あや美が、恐る恐る声をかけてきた。 「芽衣子さん、なにを探してるんですか?」 私は頭を抱えてうずくまるように机に凭れ、そのままあや美に答えた。 「USB」 あや美は、「えぇ!」という声を発し、「ヤバいですぅ」を連呼していた。 私は電話に取りつき、調査会社の担当者の直通にかけてみた。タクシーなら、もう戻ってるよね…。
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