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あれには、ここ最近の仕事が詰まっていた。
特に重要なのは、市場調査データと企画会議の提案事項の商品データ。外部に漏れたらまずいものもあった。ここにいる誰もが知っている。
室長と次長が席を立ちやって来た。同僚たちも見守っている。
「松浦さん、見つからないって、どういうこと?」
次長は穏やかに問いかけた。内心ヒヤヒヤなんだろうと、申し訳ない気持ちで吐きそうになった。
「封筒に入れたのは覚えているんです。それははっきり。先方が仰るには、封は開けてないそうです。なので、無いのが不思議としか…」
「記憶違いじゃないの?」
室長は可能性の話をしてる。私は勘違いの女王だから。
「それは間違いありません」
あや美が、私のバッグへ私物をしまってくれていた。私は、ほとんどパニック状態だった。
「とにかく、消えてなくなるなど有り得んだろう。松浦さん、どうしても見つからないとなれば、本部長へ上げなければならない。今日1日で探し出すんだ」
とんだことになった。確かに、今日1日しかない。明日から連休だ。
床に這いつくばって、目を凝らしてもみた。あや美も、みちるも同じように床を舐めるように探してくれている。
「芽衣子、ちょっと」
急な感じで、四方堂君が耳元で囁いた。『え?』
四方堂君は、あや美とみちるにも声をかけ、仕事に戻るように言っていた。確かに、ちょっと異様な光景で、他部署の人たちの怪訝な視線に初めて気がついた。
そのまま四方堂君に呼ばれて、私とあや美はミーティングルームに向かった。
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