1.厄日

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四方堂君は同期の中では最優秀。バランスだろうか、最下位の如き私と何故か同じ配属で。入社間もない頃は、何かと比べられて居心地が悪かった。 でも、四方堂君はなかなかできたいい奴で、私たちはすぐに仲良くなった。 面倒見が良くて、なにかとフォローしてくれ、そのお陰で私は一人前になれたのだと感謝もしている。 上司や先輩方からの受けが良いだけでなく、社内女子の間でも人気があり、そんな彼と気安く付き合える私は、少しばかり自慢に思ってもいた。 机にかじりついてどのくらい経った頃だろうか、オフィスの静けさにふと我に帰り、パッと周りを見渡すと、我が部署どころかフロアー全てが無人だった。 「えっ!」 焦って立ち上がり、グルリと体を回してみた。 『いつからこうなの?』 ただ、この状況には心当たりがあった。午後一の会議はこのフロアー全部の部署の定例会議だった。フロアーが無人になるため、電話も他部署へ回されるため静かだったんだ。 恐らくは、本部長の関係でのスケジュール変更だろう。朝礼で、四方堂君の報告の後でこの変更を告げられたか…。 あや美が私になにか言っていたのは、正にこの変更点だったのだと悟った。 今頃は会議の真っ最中だろう。私はあや美のラインに『ごめん、遅れた』と送った。するとすぐ様返信が。 『芽衣子さん!マズイです!本部長かなり怒ってます!早く早く!』私はゲンナリした。 『今日って一体なんという日だろうか…』 資料を手に席を立ち、7階の会議室に向かおうと半ば駆け出した時、私は『あっ!』と思い出した。 『忘れてた』こっちもマズイ…。ダッシュで女子トイレに駆け込む。
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