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ミーティングルームでは、派遣の2人が椅子に座っていた。みちるは不安を表情に浮かべ、滝沢さんは不穏な空気を身に纏っているかのようだった。
2人から距離を取り、四方堂君が壁に寄りかかっていた。表情にはなにも出ていない。
私は四方堂君に黙礼をして、2人の側に立った。
「あの、なんですか?こんな所に…」
まずは、滝沢さんが牽制球。
「ごめんなさいね、作業中に。今日中に終わらなくても構わないから」
すると、そこへあや美がやって来た。場の空気を読むように、慎重に部屋の奥へと進む。私は、あや美にも椅子を勧めて自分も2人の前に座った。
「滝沢さん。単刀直入に言いますね…私のUSBを返してください」
滝沢さんの顔が歪み、赤みも差してきた。
「はい?なんのことでしょうか?」
「え?滝沢さんが?」
滝沢さんはとぼける気だ。みちるは驚きの声をあげた。
すると、あや美が言葉を挟む。
「みちる。もしかしてだけど、芽衣子さんの書類封筒は、滝沢さんから芽衣子さんに渡すよう頼まれたんじゃない?」
あや美も直球だ。
滝沢さんは無言でみちるを見つめてる。みちるは事の重大さが分かっているだろうか。不本意に、罪の片棒を担がされているということも。
「え…あの…はい、確かに…」
「なに?ちゃんと言って」
充分聞こえていたけど、強めに促す。みちるは緊張しながらも背筋を伸ばして息を吸い込むと、一気に言葉を押し出した。
「はい、確かに、書類封筒を松浦さんに渡してくれと滝沢さんから頼まれました」
言ったことで、みちるは滝沢さんへの視線を外し、気持ちを固めたようだった。
「その事、口止めされたのね?」
「はい」
「口止めするなんて、おかしいと思わなかった?」
私には一番気になる点だった。みちるがこの点に気がつけば、こんなことにはならなかった気がするのだ。
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