3.不信

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私は滝沢さんの正面に椅子を引いて座った。 「ねぇ、滝沢さん。お願いだから、ちゃんと話してくれる?」 「なぜこんな事をしたのか、その理由なら、あなたが嫌いだからよ」 私は嘆息した。 「私が聞きたいのはそういう事じゃないの。滝沢さんは、嫌いな人に誰にでもこんな事をする人じゃないよね?私を嫌う理由があるんじゃない?その理由には、なにか、自分のキャパを超えるような感情の増幅があったんじゃ…」 「分かったようなこと言わないで!」 滝沢さんは急に声を荒らげた。本質を突いた? 「ちゃんと話して。でないと…」 私は本部長の怒りを想像していた。このことを知れば、滝沢さんはどうなるのか…。私自身も飯島課長のところに遣られるだろうけど、そのことは仕方がないと思っていた。 「でないと上に言いつけてクビってこと?別にいいわよ、こんな会社」 「私だけでなく、会社にも不満があったということ?」 滝沢さんは椅子の背にもたれ、脚と腕を組んだ。完全に防御体制。私を斜に見て、馬鹿にするような笑いが口の端に表れた。 「不満なんてものじゃない。大っ嫌いよ、会社も、あんたも!」
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