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「…私に不満を抱くのは無理もないと思うけど、会社にって、どういうことなの?」
私は、滝沢さんの心の闇が、思いの外深い事に心が折れそうになった。ただの嫌がらせなどではなく、それはもしかして…。
「復讐よ」
あぁ…やっぱりか…。
「なにか、あったの?」
ハァと息を吐いた滝沢さん。呆れたように私を見る。いかにも、軽蔑してるというような。
「ホンットに、あんたってボヤボヤして!なんにも不思議にも感じなかったわけ?会社に対して」
「だから、ちゃんと説明…」
「早川さんの件」
「え?」
早川先輩?どういうこと?
突如として早川先輩の名前が出て、私は暫し固まった。
先輩のなにが関わっているのか、想像もつかない。当の滝沢さんも、なにやら放心したような感じで黙ってしまった。
1分か2分、或いはそれ以上かそれ以下。時間の経過の実感なく、ハッとした時、滝沢さんが口を開いた。語調が変わっていた。
「早川さんとはすごく気が合って、私たちはよく飲みに行ったし、休みの日にも会うことがあった。去年の春、あの事があって…あなたはなんにも知らなかったらしいけど、新規参入にしろ新商品にしろ、立て続けに他社との競合に負け、情報漏洩を疑われていた当時、本部長が派遣社員に目をつけ調査し出した」
そのことは、早川先輩の後を継ぐよう主任に任命された時に、『なにかあった』ぐらいの認識ながら、私も気がついていた。
そうだったのか。早川先輩はその管理責任を問われたのか。
「そうだったの…で、仲良しの早川先輩が辞めさせられたことを恨んでいたのね?」
「そんな簡単な話じゃない!だからあなたは…」
深いため息と共に、嗚咽を含んだか細い声音が尾を引いた。彼女の内面の苦悩を物語っていた。
「ごめんなさい。ちゃんと、説明してください。私、ちゃんと聞きますから」
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