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「できた」
私は、室長に書類を承認してもらい、本部長室へと急いだ。
「芽衣子さぁん、早く早くぅ」
という声を背中で聞きながら。
本部長室へ急ぎ、ドアをノックして入ると、本部長はシニアグラスを掛けて、まだ仕事をしていた。
「あぁ、芽衣子君か。遅かったじゃないか」
私は本部長の机の前に進み出て「すみません」と一礼し、報告書を手渡した。
USBの紛失の件は耳に入っていない様子に安堵した。
「よし、じゃあ年明け一番に議題に上げよう。芽衣子君、ご苦労だったね」
本部長は、書類に目を通して、機嫌よく言った。
私は、会費の件をどのように本部長に伝えようか、迷っていた。忘れた振りが通用する相手ではない。
「よろしくお願いします。それと、先日の会費の件ですが…」
本部長の反応を見てから決めよう。そんなに関心がないようなら、なぁなぁで流してしまえ。
「あぁ、どうだ?犯人は見つかったのか?」
「あ…はい。判明しました」
「そうか、誰なんだ?」
シニアグラスを外し、誰だと聞いた時の目が怖かった。悪代官じゃなくて、こりゃ鬼平だ。
「はい、それが…あの、本部長、この件は私に任されたのですよね?」
「まあ、そうだが。それがどうした?」
「実は、この件は少し根深いものがありまして…もう少し私に預けてくださいませんか?そんなに長くはかかりませんので」
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