3.不信

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その夜、両親がお寿司を注文していたとかで、またまた豪勢な食事にありつけた。 私はだいぶ前から気になっていたことを父にぶつけてみる。 「ねぇ、お父さん。来年、定年だよね?」 父はほろ酔いで、機嫌よくテレビを見て笑っていた。子どもの頃から見慣れた父の姿だ。 「うん?そうだよ。6月な」 あと1年半か。 「この家のローン、まだ何年も残ってるんでしょ?どうするの?」 ここで確認しておきたい。私や弟たちに背負わされたらたまったもんじゃない。 「退職金で払うよ。大丈夫だろ?まぁ、足りないようなら再就職するし、なんとかなるだろ?その後は年金で細細とやっていくわな」 細細となんて、絶対に無理に決まってる。こんなどんぶり勘定だなんて…予想通りだ。 「大丈夫とは思えないな。私たちを当てになんかしないでね。結婚しろとか言うならさ」 私は捨て台詞のように言い放ち、その場から逃げた。両親のお門違いな説教の気配がしたからだ。 自分の部屋に戻ると、携帯にメールの着信があった。早川先輩からの返信だった。 私の目は、『昨年末、親元に戻りました』のひと言に釘付けになった。 『え?』親元って…確か、早川先輩って四国じゃなかった? 『マジかぁ…』 この連休中に会う算段は無くなった…いや、ちょっと頑張ってみようか。今日明日と、実家にただ居たところで虚しいだけだ。
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