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それから。戦争と民の為に、騎士団長の俺は王の12番目の娘。ローラ姫に度々密会をすることになった。
ローラ姫は才覚のある白鳥のように美しい肌を持つ人だった。
若い年齢を感じさせない。王と変わりがないほどの思慮深さがあった。
12夜の日。
12の鐘の鳴る夜。
俺とローラ姫は口づけを交わした。
まもなくこの国は戦火の中に消える。
俺も姫も死ぬことを覚悟したその夜。
一つの希望がでてきた。
それが、森に住む4人の魔女だった。
いつものバルコニーで姫と密会した。
ここは姫と二人だけで出会う秘密の場所だった。
「ラルフ様。騎士団長のあなたにお願いがあります」
ローラ姫は首に飾られた宝石をはずし、俺に渡した。
それは輝くエメラルドやダイヤでできた首飾りだった。
「これを、言い伝えの森の魔女に渡してください。きっと、助言や力を与えてくださるでしょう。でも、例え森の魔女がどんなに美しい娘だったとしても、心を奪われないでくださいね」
姫は悲しみの顔だが、仮初めに悪戯っこのように微笑んだ。
俺はニッと唇を吊り上げて首飾りを懐にしまうと、明日の晩まで寝ている間も肌身放さないことにした。
「まもなく新しい風が吹きます。それはこの国を大きく変えることになるでしょう。民草も。王も。騎士も。ですが、これから変わることをどうして恐れることがありましょうか?確かに変化は時に恐怖です。でも、きっと生まれ変わることは素晴らしいことだと思います。私たちに出来ること……それは、変化を迎えることだと思います……私も正直、怖いです。眠れなくなるほど怖いです」
ローラ姫は涙を流し、天空を指差した。
そこには満月が佇んでいた。
「私たちは今からあの満月のように変化をするのですね。雲に隠れる時もあり。欠ける時もあり。一日でも同じ姿ではなく……。今は森の魔女の助言を聞いてみることが、国や私たちにとってもっとも重要なことだと思うのです。きっと、力になってくれるはずです」
実は、俺は姫の恐怖をどうすることも出来ないのだ。
自分自身はまったく怖くはない。
死ぬことも、そして、国が滅びることすらも。
だから、どんな声を掛けていいのか正直解らなかった。
何故か気持ちがこもっていないように思えます……。
いつもの声色です……。
何も感じないのですか?
そんなことを言われてしまうのが怖かったのだ。
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