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僕の右腕を枕にして寝息を立てる彼女を傍目に、僕はそれを口に出して呟いてみる。
「僕たちは夢と同じ物質で作られていて、僕たちの儚い命は眠りとともに終わる、か……」言い終えて、思わず溜め息が出た。
チラリと、僕は彼女の寝顔を見た。途端、トクンと心臓が僅かに跳ねた。
なぜだろうか。昨日まではこんな気持ちはなかったのに、いざ意識し始めると彼女が可愛く見えて仕方がないのだ。
左手で、そんな彼女の下唇を押してみる。指をちょっとだけ下にズラすと、彼女の綺麗な歯並びが垣間見えた。
なんだか、いやらしい事でもしている気分だ。
それから僕は、妙に胸が高まっていくのを感じて、ゆっくりと自分の顔を彼女の顔に近付けていく。
バクバクと暴れる心臓なんて気にもとめず、亀の歩みなんかよりずっと遅い速度で彼女に近づいていく。
互いの唇が触れ合う直前、僕は思い切り息を吸い込んで、そのまま息を止める。
「んっ」
唇が触れた途端、彼女は短く声を漏らした。
そして僕は、彼女の歯と歯の間に舌を滑り込ませていく。同時に、左の親指に少しだけ力を込めて、舌の歯をちょっとだけ下に押し下げてやった。
瞬間、舌先と舌先がチョンと触れて、驚いた僕は思わず舌を引いてしまった。が、すぐさま気を取り直した僕は、構わずそのまま彼女の舌に自分の舌を絡ませていく。
それから暫く経った後、息苦しさを感じた僕は少しずつ鼻から息を吐いていく。
どのくらい唇を合わせていただろうか。
ふと我に返った僕は、気恥ずかしさの余り急いで彼女から顔を遠ざけた。
勢い余って、僕の右腕を枕に眠る彼女の頭もグラリと揺れたが、それでも彼女は起きなかった。
ちょっと憎たらしい感じがした。けれど、好きになってしまった今ではそれ以上に愛が込み上げてきた。
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