囁き声

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 僕は何の気も無しに彼女の頭を撫でてみた。  そして、後悔した。  余計彼女に対する愛おしさが溢れ出てきてしまい、どうする事もできない明日への焦燥がより明瞭に浮かび上がってきたのだ。  言ってしまえば死にたくないとか、生きたいとか、そういった人として当たり前の感情達が今になって堰を切ったように込み上げてきたのだ。  だけど、そうした思いを必死になって心の隅っこに追いやって、僕は彼女の耳元でこう囁いた。 「おやすみ」  その時に見た彼女の涙が僕にとって最後の景色となった。
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