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篠田は週刊誌を振って見せた。週刊誌のタイトルは「幽霊は見た」。極一部ではとてもメジャーなオカルト週刊誌。常に心霊写真を募集している。
「何で失敗したんだ? 写真を撮るだけだろ?」
篠田の言葉に俺はふと考えた。そういえばなんでだっけ? 後ろでドアがギイギイ音を鳴らしている。
「なんだお前覚えてないの? 赤いフードの女のこと」
キングの言葉で俺は何かを思い出しそうになった。後ろでドアがうるさく音を響かせる。
「俺は赤いフードの女と出会って、確か、後ろに転んで、それで……」
「やっと思い出したか。そうだよ。それでお前、その女に捕まったんだよ」
「捕まった? ……」
ドアがうるさい。しかし、その音はドアの音じゃなかった。俺は恐る恐る背後を振り向く。
「お前、これ何とかしないと、多分、死ぬぜ?」
うるさく音を鳴らすドアの横に、赤いフードの女が手鎌を持って立っていた。
「……!?」
俺は驚いて飛び起きた。そこは酷く薄暗かった。屋根に開いた穴から月の光が少し差しているだけだ。ギイギイと音が聞こえ、その方向を見ると、扉、というより板を入口に無理やり立てかけている赤いフードの女がいた。
「起きた? じゃあ、さっさと帰ってくれる?」
女はぶっきらぼうにそう言った。幽霊ではなさそうだ。かと言って殺人鬼というわけでもない。俺は床に手を付きながら起き上がった。その時、木製の床のあちこちに深い切り傷があるのに気が付いた。なんだこれ?
「一応、聞くけど、どういう理由でここに来たの?」
女は板の位置を確認すると、振り返ってそう聞いた。黒髪のポニーテールで、容姿端麗。年は俺と同じ十代に見える。しかしどこか影がある。
「ええっと、実は最近この裏山に幽霊が出るって噂があって、それで、まあ」
俺は床に置いてある携帯とインスタントカメラに気付き、拾い上げて見せた。女はそれで納得したらしい。
「幽霊の正体見たり枯れ尾花。私を見て誰かが勘違いしたってわけだ」
俺は頷いた。一週間前から三貫寺の裏山で、赤いフードの女の霊が徘徊している、そんな怪談だった。しかし一週間か。
「君は……一週間も前からここで何してんの?」
「住んでる」
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