第一の手紙

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僕が君に手紙を書くのなんて、初めてのことだよね。 どうしてほとんど毎日会っているのに、わざわざ手紙なんか? と驚いている君の顔が目に浮かぶよ。 でも、僕は君のびっくりした顔もとってもキュートだと思っているから、実はこっそり想像して、わくわくしているんだ。 ごめんね。 さて、本題に入ろう。 なぜ僕が君に手紙を書くことにしたか。 それは、今日の日付に意味があるからだ。 君は気づいているかな? 大らかな君のことだから、きっと気づいていないだろうな。 今日はね、君と僕が出会ったあの日から、ちょうど300日目なんだよ。 驚いたかい? 月日が流れるのって本当に早いよね。 どうしてそんなの数えてるのかって? それはもちろん、あの日、君が僕に向けてくれた太陽のような笑顔を、忘れたくなかったからだよ。 だから僕はあの日から、カレンダーにずっと記しているんだ。 1日目、2日目、……10日目、……100日目、ってね。 知らなかっただろう? 君をびっくりさせたくて、隠していたからね。 そうして僕は心に決めていたんだ。 晴れて300日が経ったら、君に手紙を書こうって。 何を書こうか、ずっと前から考えを巡らせていたんだ。 僕がどうして君を好きになったか。 僕がどれほど君を愛しているか。 でも、そういうのって言葉にしたらとても陳腐になってしまう。 だから、やめておくよ。 それより僕は、今日の朝陽の輝かしさだとか、道端のアスファルトの隙間から生えていた可憐な花の健気さだとか、水溜まりに映った空の青さだとか、そういうものを伝えたい。 君が生きているこの世界は、とても綺麗なんだよってこと。 君がいるおかげで、僕の世界はこんなにも綺麗なんだ。 こうやって書くと、きっと君は、僕がどんなに君のことを愛しているのか分かってくれるだろう。 ねえ、愛しているよ。 君のことを、誰よりも強く。 君と出会ってから、君のことを考えない日は一日だってなかった。 君に会える日は、朝起きた瞬間から、いや、その前の晩に眠りにつく前から、ずっと君のことを考えていた。 第一声はなんて声をかけようか。 どうやって君を笑わせようか。 ……長くなってしまったね。 君のことを思うと、筆がとまらないよ。 忙しい君のことだから、きっともう寝る時間だね。 おやすみ、愛しい君。 神様、どうか、僕の大切な彼女に、素敵な夢を。
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