アドバルーン

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アドバルーン

 マンションの自室から外を見たら、真っ黒いアドバルーンが見えた。  普通アドバルーンは、どこかの店が宣伝用に使う物で、赤や黄などの、派手で明るい色が基本だ。  なのにそのアドバルーンは真っ黒で、珍しさから凝視していたら、下に小さな垂れ幕状の物が下がっているのが見えた。  気になり、さらに目を凝らすが文字が読めない。それでも諦められず、オペラグラスがあったのを思い出し、それを持って来て文字を読んでみた。  あなたには、このアドバルーンが何色に見えますか?  もし黒色に見えたというあなた。  残念ですが、あなたの寿命は後一週間以内です。  思いもよらぬ一文に、反射で顔を上げ、目をこすった。その一瞬の間にアドバルーンは跡形もなく消え失せていた。  文字だけなら何の冗談だと笑うところだが、ついさっきまで見えていた物がいきなり消えてしまっては、さすがに笑ってなどいられない。  黒い風船に白い幕という、今にして思えば葬式カラーのアドバルーン。  不吉な物体が消えた空を、俺はただ茫然と見つめた。 アドバルーン…完
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