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怒るシンデレラ。しかし、この時シン王子には、まだシンデレラの怒っている理由が分からなかった。
――
それから十数か月後、シン王子待望のアボカドがやっと実った。これに対して、シン王子は感動から目をウルウルさせながら、一言。
「アボカドって……木から生るんだな」
「だから、何度も果物だって言ってるでしょうが!!」
室内にいたことで真っ白だったシンデレラの肌も、この中の誰よりも働いたことで、真黒になってしまった。だが、これは決してシンデレラ一人で作ったものでは無い。シン王子も、そして野菜達も頑張って育てた秀作だ。
「じゃ、早速食べるぞー!」
「ちょい待ち!!」
もぎ取ったアボカドを食べようとするシン王子を、シンデレラは慌てて止める。
「まだその身、青いでしょう? それをもっと熟さないと、美味しく食べれないわよ」
「なんだぁ、そうなのか。結構待ったのにな」
「とりあえず、収穫だけしときましょう」
まだ身の青いアボカドを収穫して倉庫の中にしまうと、シン王子はシンデレラの往診に付き合い、外へと繰り出した。
その間に、怪しい影が忍び寄っているとも知らずに。
「ケッケッケ……これがアボカドって奴ね。じゃ早速、食いつくしてやろうかね!!」
――
「うおーっ!?」
診療所兼自宅に帰宅した瞬間、シン王子は雄たけびを上げた。何事かと野菜達やシンデレラが向かうと、そこには人が倒れていた。
「誰? この人。浮気相手?」
「んなわけないだろ!? オバサンだぞ!? そうじゃねーよ、見れば分かるだろ、俺を眠らせた女王、女王が何故か倒れてんの!」
シンデレラはしゃがむと、持っていた聴診器で胸の音を聞く。
「おいおい。俺に毒盛った奴を助けるのか?」
「当たり前でしょ。これでも医者なの」
本来はお姫様じゃないか。シン王子は思ったものの、同時に彼女の優しさに惹かれ、自分自身を恥ずかしく思った。
「口から泡が出ているし、白目になっている。お腹の感じからしても……お腹を壊したのね、これを食べて」
「これ?」
シンデレラは、転がっていた、半分かじりかけのアボカドを見せた。それも、皮ごと無くなっている。
「おいおい、何で俺の家のアボカドを食うんだよ」
「そうねぇ。……行ってみる? 女王の城にでも」
シン王子は頷いた。
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