アボカドとシンデレラ

4/6
前へ
/6ページ
次へ
 怒るシンデレラ。しかし、この時シン王子には、まだシンデレラの怒っている理由が分からなかった。 ――  それから十数か月後、シン王子待望のアボカドがやっと実った。これに対して、シン王子は感動から目をウルウルさせながら、一言。 「アボカドって……木から生るんだな」 「だから、何度も果物だって言ってるでしょうが!!」  室内にいたことで真っ白だったシンデレラの肌も、この中の誰よりも働いたことで、真黒になってしまった。だが、これは決してシンデレラ一人で作ったものでは無い。シン王子も、そして野菜達も頑張って育てた秀作だ。 「じゃ、早速食べるぞー!」 「ちょい待ち!!」  もぎ取ったアボカドを食べようとするシン王子を、シンデレラは慌てて止める。 「まだその身、青いでしょう? それをもっと熟さないと、美味しく食べれないわよ」 「なんだぁ、そうなのか。結構待ったのにな」 「とりあえず、収穫だけしときましょう」  まだ身の青いアボカドを収穫して倉庫の中にしまうと、シン王子はシンデレラの往診に付き合い、外へと繰り出した。  その間に、怪しい影が忍び寄っているとも知らずに。 「ケッケッケ……これがアボカドって奴ね。じゃ早速、食いつくしてやろうかね!!」 ―― 「うおーっ!?」  診療所兼自宅に帰宅した瞬間、シン王子は雄たけびを上げた。何事かと野菜達やシンデレラが向かうと、そこには人が倒れていた。 「誰? この人。浮気相手?」 「んなわけないだろ!? オバサンだぞ!? そうじゃねーよ、見れば分かるだろ、俺を眠らせた女王、女王が何故か倒れてんの!」  シンデレラはしゃがむと、持っていた聴診器で胸の音を聞く。 「おいおい。俺に毒盛った奴を助けるのか?」 「当たり前でしょ。これでも医者なの」  本来はお姫様じゃないか。シン王子は思ったものの、同時に彼女の優しさに惹かれ、自分自身を恥ずかしく思った。 「口から泡が出ているし、白目になっている。お腹の感じからしても……お腹を壊したのね、これを食べて」 「これ?」  シンデレラは、転がっていた、半分かじりかけのアボカドを見せた。それも、皮ごと無くなっている。 「おいおい、何で俺の家のアボカドを食うんだよ」 「そうねぇ。……行ってみる? 女王の城にでも」  シン王子は頷いた。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加