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女王に応急処置を取った後、シン王子一行は女王の家へ向かった。
「見ろよ、アボカドだらけだ。だったら、俺よりアボカドの食い方知ってただろうに。それとも、この女王は皮ごと食う習性があったのか?」
「どうかしらね」
シンデレラはそう言いながらも、持っていたハサミでアボカドを真っ二つに切った。すると、シン王子はそこから出てきたものに驚く。
「キウイ……!?」
アボカドとみられる皮の中には、黒い種が沢山入った、キウイが実っていたのだ。シン王子がハサミを受け取ってもう一つ切ってみると、これにもキウイが実っている。
「……きっとあの人、アボカドを食べたかったけれど、実らなかったのよ。キウイしか」
「だから、俺のアボカドを……。でも、何で俺を狙ったんだ?」
「それは多分、貴方がアボカドを食べたがっていたからじゃない? こうしたら、きっと自分でアボカドを作る気になるかもって」
「成程な……」
野菜達は思った。
「何故そんなに上手く展開が運ぶのか」
と。
――
とにもかくにも、様態が良くなった女王に真相を聞いてみると、女王はこくこくと頷き、申し訳ないと、シン王子に頭を下げた。
「いや、良いよ。あとさ、キウイもそうだけど、アボカドは皮は食わないんだよ。それに、あのアボカドはまだ熟しきってないんだってさ」
「そ、そうだったのかい……どうりで、不味いと思ったよ」
「食べたいなら、これをどうぞ」
シンデレラは、女王とシン王子に、熟して皮が茶色くなったアボカドを手渡した。それも、既に半分こされており、スプーンも用意されている。
「シンデレラ、まだ身は熟してないはずじゃ……」
「実は、どうしても食べたいって言う貴方の為に、市場で一個だけ買ってきたのよ。さ、食べて」
シンデレラの優しさに、シン王子、そして女王までもが目をウルウルさせる。シンデレラが静かに頷くと、二人はスプーンでアボカドをすくった。
「いっただきまーす!!」
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