トイレ

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「大丈夫か?!」 そう声をかけた男が、床に膝を落として険しい顔をしていた。 あいつはーー?? と思い鏡を見ると、男に床に押さえつけられて、もがいている姿が見え驚愕した。 「どういうこと?!」 「は?見てわからねぇのかよ!押さえてんだよ!」 「そうじゃなくて!」 「なんだよ?!」 力をいっぱい押さえつけているのか男は、歯を食いしばり、切羽詰まっている様で声を荒げる。 私も、それにつられて大きな声になった。 「だから!なんでそいつに触れるの?!」 霊に触れるってそりゃびっくりするでしょ? 「はぁ?よくわかんねぇよ!」 それどころじゃないだろうと言う顔をされたけど、私の頭は混乱していた。 なんで? この男も霊だから? 霊同士って触れるの? 疑問だらけだ。状況が飲み込めなくて、グルグルと考えてると、鋭く怒鳴られた。 「いい加減にしろ!こいつをどうにかしないとやべぇだろうが!!」 「そうだけど…。私、何にも出来ないんだよ!そいつに触れないし!」 「は?まさか、お前…こういう奴視んのに追っ払ったり出来ねぇのかよ!」 「そうだよ!視えるだけだよ!逃げるしかないんだよ!悪い?」 押し問答に、逆ギレ。 ヤケクソになって息を切らしながら怒鳴ってしまった。 「はーーー。たくっ…どうにか出来んのは俺だけかよ!」 「え?出来るの?」 「やってみるしかねえだろ!その代わり、最初に言った俺が誰なのか知るために本気で協力しろよな!」 そうだ、あの時は生返事で探す気もなかったけど… 「わかった!協力する!ええと…」 名前…なんだっけ? 「名前もわかんねえんだよ。」 少し寂しそうに答えた。 「そっか…わかった!じゃあ、ゴン太!」 「は?!ふざけんな犬みてぇな名前で呼ぶなよ!」 「いいじゃん!呼びやすくて!そんなことよりここで私を助けないと、協力出来ないよ?」 彼は降参したように、はーーとため息をついた後、押さえてるあいつの首を掴み勢いよく個室に押し込むと外についていた鍵をしめた。 ドン!ドン!ドン!! 内側から耳を防ぎたくなるぐらいの扉を叩く音が聞こえ、ゴン太は後退りしながら私の隣まで戻る。 今度は、私がさっきは開かなかったドアノブに手をかけた。
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