第1章  姫から王子へ

7/13
前へ
/224ページ
次へ
 相手は大学1年生で高1のじぶんがどうこうできる自信もないから、リードされるがままなのは事実だった。10代の3学年差はかなり大きい。    でも綾乃さんはべつに、欲望あらわに押してくるってわけじゃないけど。  祐樹は電車の窓に映るじぶんの顔を見ながら、さらに考える。    4期上の先輩である大澤彰人(おおさわあきひと)の紹介で出会って、付き合い始めてそろそろ2ヵ月。付き合いはじめに夏休みが入っていたから、けっこう頻繁に会っていた。  最初のデートで手をつながれて、3回目のデートでキスをした。すべて綾乃がリードした。べつに嫌だったわけではない。なんとなく誘われて、ここはこういう空気なんだよなと流されたかんじだ。  祐樹にとってはファーストキスだったから多少ドキドキはしたが、あこがれのシチュエーションとかがあるわけでもなかった。  部屋のまえまで送っていって、別れ際に綾乃がかるく目を伏せる仕草を見せたから、そっと顔を傾けると綾乃がすっと背伸びして触れるだけのキスをした。ほんの一瞬、唇が触れて離れただけだ。なんの感想を持つ暇もなかった。  男子のじぶんがこんなに受身なままでいいものかとも思うが、女の子と付き合うのも初めての祐樹になにかしてもらおうとは相手も期待していないようだ。
/224ページ

最初のコメントを投稿しよう!

445人が本棚に入れています
本棚に追加