第1章  姫から王子へ

3/13
前へ
/224ページ
次へ
   中等部では祐樹姫(あるいは姫)という本人のまえで呼ぶと蹴りが飛んでくるあだ名だったのだが、高等部に入ったらそれが王子さまに変わったのだ。  姫から王子だなんて、ずいぶん大きな路線変更だ。けれども、いまの笑顔はたしかに王子さまの呼び名にふさわしかった。  祐樹の外見はやさしげで線が細くてきれいだ。  男子高校生という響きにある汗臭さや生臭さを一切感じさせない、シャンプーのCMにでも出したいくらいさわやかで清潔感のただよう見た目だ。  9月の残暑をものともしない、涼しげな微笑み。  中高一貫校だからお互い中学入学時から知っているわけだが、祐樹のかわいさは中等部の入学式ではちょっとした騒ぎを引き起こした。 「今年の新入生には女子がいる」  そんな噂が学校中を駆け巡ったのだ。
/224ページ

最初のコメントを投稿しよう!

445人が本棚に入れています
本棚に追加