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何日ぶりかしら。 あなたが目を覚ますの。 ほら、見える? 目の前にいるのが私よ。 しわくちゃでしょう。 年老いてて、であった頃はどんな顔だったかも忘れたでしょう。 若い頃はよく顔を見つめてくれていたけれど。 年老いてからはそう顔を見合わせることもなかった。 あなたは、定年しても、盆栽ばかりいじっていた。 時には「ばばあ」だの罵ってたわね。 その度、わたしも「こんなじじい、さっさと死んでしまえ」なんて思っていたけれど。 いざ、こうなると――案外辛いものね。 あの時は本心で思っていたのに、どうしてか今は寂しい。 ――どうしたの? 泣かないで。 どうして泣くの? あなたは内面は臆病者なくせに、私の前では強い人だった。 なのに泣くの? がんっていう病気、やっぱり辛い? ――そうね。
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