Jelly

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「そうそう。クライアントの要求が安藤さんの考えてた幅を完全に超えちゃってるの。初めはコスト抑えたくて、システムをパッケージで収めようとしたんだけど、後からどんどん要件が変更になってさ。カスタマイズだらけでコーディングが複雑すぎるし、もうカオスだよ」 「クライアントは『システムの専門家なら、このくらいの機能は言うまでもなく付けるはずだ』って、裏で勝手に見積もるからな。ズレは出るだろ」 「それでもさ。安藤さん、前に百人以上の大規模プロジェクトとかも仕切ってたって聞いてたから、余裕かと思ってたのに」  俺の意見はゼロでさっさと食事のオーダーを済ませて、神長はテーブルに肘をつく。 「うちでやってる開発マネジメントは大手と比べてかなり流動的だから、慣れるまではそんなもんじゃないの」 「そうかもしれないけどさあ。やっぱ期待裏切られた感はみんなあると思うよ。社長だって何も言わないけど絶対焦ってるって」  そもそも安藤さんがうちの会社にきたのは『時代に即したシステム開発のノウハウを、独立前に学びたいから』という理由ではあるけれど、いくら勉強のためとはいっても、お客さんが練習台ってわけにはいかない。
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