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「こっちには飴玉の生る木があるな。どれどれ……」
イノダは子供時代のように木登りをして、飴玉を取る。
最初にこの星に来た時の警戒心は薄れ、その目には無邪気な光がきらめいていた。
「あー……」
飴玉を舌に乗せる。
葡萄味だ。
絞ったばかりの新鮮な葡萄の果汁を、そのまま凝縮して飴玉にしたような、濃厚な味わい。口の中で転がす度、果実の旨みが溶けだして口内に行きわたる。
「うまい。こんなうまい飴玉は地球でも食ったことがないぞ」
イノダは次々と飴玉をもいでは舐めて味を見る。
マンゴー、イチゴ、スイカ、メロン、その他食べたこともない宇宙の果物らしき味。
「隊長、信じられません。ケーキがキノコのように地面から生えています」
「こっちにはクッキーでできた山があります」
「何と言うことだ。我々は一つの楽園を見つけたのだ」
***
探検隊のメンバーは星中から集めてきた極上のお菓子を前に、意気揚々だった。
「ここは間違いなく宇宙随一の観光名所になるだろう」
「僕なんかはいっそここに住みつきたい位ですよ」
「地球の本社に報告する前に、もう少し位味わっても罰は当たらないでしょう」
隊員たちは堪えきれず眼前のケーキやクッキーに手を伸ばそうとした。
その時。
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