別離、吸収、融合

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「ヒロト君だね、それではこちらを。」 目の前の長机に座る1人の老人。 背丈は小さいが、丸メガネの向こうの澄んだ瞳は憂いを帯び、その佇まいだけで威厳を感じ取れる。 差し出されたのは一冊の魔導書。 厚さは凡そ10cm。 臙脂色の表紙。 「魔導書の説明をします。良く聞いて下さい。」 裏のページから一枚捲る。 裏表紙の内側に、カードと同じくらいの大きさのポケットがある。 「ここに、先程の属性カードを入れて下さい。」 言われるがまま、黄色のカードを差し込む。 すると、臙脂色であった表紙がみるみるうちに黄色に変わる。 「これが、雷属性の魔導書です。最初の1ページを捲ってみて下さい。」 そこに浮かび上がる文字。 見開きで三つの、恐らく魔法名が書いてある。 教師の説明によると、その三つが雷属性の初級~上級魔法となる。 雷魔法 初級:【サンダー】 電撃の刺突。 中級:【サンダゴル】 雷をその身に纏う。 触れた物に電撃を与える。 上級:【サンダイオン】 焦点とした目標に雷を落とす。 (.....ほーん、なるほどなるほどこんな仕組みが...。) 「そして次のページからは、魔法陣を書き記すページが数百。オリジナル魔法を書き記すページが凡そ百程あります。これは一生物で、あなたが何十年後に死ぬ時まで使えますので、大切になさって下さい。」 魔導書をペラペラと流し見しながら体育館を出る。 ほぼ全部白紙だが。 顔を上げると、気付いたユキとテラポンが手を振りながら駆け寄ってきた。 「どうだったー?あ、雷属性かー!いいね、かっこいい!」 ハニカミながら笑うユキ。 「俺の事も褒めろ!三属性だぞ!」 「はいはい、あんたも凄い凄い、はい。」 「このやろっ!」 嫌味ったらしく言い放ったユキを追いかけるテラポン。 笑顔で駆け回る2人を見て、やれやれとヒロトも笑みを浮かべる。 (死ぬまで使えるか.....。) 閉じた魔導書から目を逸らし、空を見上げる。 今日も空は雲一つ無く、晴れ渡っていた。
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