一章

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そう。 私は芋虫のよう。 私はまだこれからサナギになって、そして蝶になる。 なんて本気で思っていたのは何歳までだっただろうか… いつの日か、自分への言い訳すらも聞こえなくなった。一言でいうならば歳を感じたんだろうと思う。 「店長」 「今日この後、早上がりさせて頂いてもいいですか?」 またいつものあれだ。 おねだり。だ。 私は苛立つ気持ちを抑えて彼女の話に耳を傾けた。 「という理由で急きょ大学にいかなきゃいけなくなったんです。」 アルバイトの彼女は私に説明を終えたようだ。 正直、あまり聞いてもいなかった。 そもそも、夕方から閉店にかけての遅い時間に大学に行くという理由がどう頭をひねっても疑問だ。 私は知っている。 私が何を言おうと、彼女の中ではもう休むことは決定事項。 幸い、私がかわりに出ればすむ内容だった。 …こうして私はまた、芋虫のまま、サナギにもなれない自分をうらめしく思うだけで、歳を重ねていくのだろう。 諦めにも似た感覚で彼女に一言。 「頑張ってきてね。」 と伝えると、彼女は飛び切りの笑顔を私に見せてくれた。 内心、その笑顔をほんのわずかでも客に見せてやってくれ… と醜態をつき、私がひっそりとついた、そのため息すらも、どこか遠くへと消えていってしまった。 だけど、今思い返せば、私は彼女に感謝している。 彼女のお陰で、芋虫の私が蝶になるきっかけを手にしたのだから。
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