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「……島本……」
「なんだよ、化けもん見てるような顔すんなよ」
「だって君、LINEは? 夏蓮さんと喧嘩……」
「あのLINEは全部夏蓮が打ったデタラメだよ」
「……え」
「俺が頼んだんだ」
「……騙されちゃった」
本当に騙された。島本がLINEを打っていると疑わなかったのに。
あれだけ口調を真似られる夏蓮さんは、よほど島本を好いているに違いない。
「そんなことより」
LINEなんかどうでもいいと、吐き捨てるように呟いてから、島本は僕を見据えた。
僕は空を背後にして、島本を優しく見詰めた。
「俺は、お前がここで何をするつもりか、何を考えてるのか、そんなもんはどうでもいい」
「どうでもいいんだ……」
ならなんで来たの?
「今のお前に、ひとつだけ伝えたい事がある」
「なんだい?」
「逃げろ」
島本はくそ真面目な表情で、そう言った。
聞き間違いじゃあない。
「な、何から?」
「そんなこと知らねーよ。でも、逃げるんだ。今持ってる全ての物を一旦棄てて、全力で逃げろ」
「………」
「逃げた先で、また新しい人生を始めればいい」
新しい、人生を。
そんなこと、考えたことすらない。
「はっきり言えるのは、だ。逃げた先には、俺がいる。ちゃんといる。でも逃げずに諦めるなら、そこにはなにもない。無だ」
「……しま」
「ほら、後ろ見な」
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