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島本の目線が、僕の背景に流れた。
僕はおもむろに振り返った。
「夜明けだ」
天に向かって無表情に伸びる高層ビルの頭が、キラキラ輝き始めた。
四方に伸びる光の帯が、街を包み込む。
朝日に抱かれた世界は、堪らなく美しかった。
「おはよう、藤原」
「……おはよう」
1日の始まりの挨拶は『おはよう』なんだぞ、と、そういえばよく言っていたね。
「俺はもう帰るよ。夏蓮のLINE、多分まだ続いてるだろうから」
「……うん、そうだね。とめてあげなきゃね」
「じゃあ、待ってるから」
僕が返事をする前に、島本はくるりと背を向けた。
そして迷いなく屋上を後にした。
残された僕は再び背後を仰ぎ見て、朝日を浴びていた。
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