2/14
前へ
/14ページ
次へ
  ◆◆◆◆◆ 「おい藤原くん! たった今『桃源』のバイヤーから連絡が入ったよ。今月末のハロウィンイベントのお菓子の詰め合わせ、中身を少し変更したいそうだ」 「えっ?!」 思わず出てきた自分の声に、僕は慌てて口元を押さえつつ、椅子から立ち上がった。 上司である石橋部長のデスクまで、駆け足で向かう。 部長は僕を上目遣いで迎えて、企画書をパシパシ右手で弾いて示した。 「チョコレートが3つ。飴が2つ。クッキーが2つ。……だったろ?」 「は、はい、確かに」 「チョコレートを2つ。飴を4つ。クッキーを無くして、小ぶりのマカロン1つで、袋のサイズを落としてくれ。……とのことだ」 そ、そんな馬鹿な。 「部長、それは無理です。もう前回決まった企画で進んでいます。今さら変更なんて……」 無茶苦茶だ。 クッキーの発注も袋の発注も既に終わり、納品予定日も決まっているのに。 「……無理です」 「『桃源』とはこれからも友好的な関係を築いていく必要があるんだ。なんとかならんか」 「そう言われましても……」 無理なものは、無理だ。 「頭から『出来ない』と決めつけるな。ここで無理をしてでも先方の要望に答えれば、今後の信頼関係に繋がるんだぞ!」 「しかし……」 「俺も手伝う。明日は取引先に頭下げて回るぞ!」 「……分かりました」 明日は土曜日だ。 これでまた休日がつぶれる。 もう、数ヵ月は休みをとっていない。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加