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「おい藤原くん! たった今『桃源』のバイヤーから連絡が入ったよ。今月末のハロウィンイベントのお菓子の詰め合わせ、中身を少し変更したいそうだ」
「えっ?!」
思わず出てきた自分の声に、僕は慌てて口元を押さえつつ、椅子から立ち上がった。
上司である石橋部長のデスクまで、駆け足で向かう。
部長は僕を上目遣いで迎えて、企画書をパシパシ右手で弾いて示した。
「チョコレートが3つ。飴が2つ。クッキーが2つ。……だったろ?」
「は、はい、確かに」
「チョコレートを2つ。飴を4つ。クッキーを無くして、小ぶりのマカロン1つで、袋のサイズを落としてくれ。……とのことだ」
そ、そんな馬鹿な。
「部長、それは無理です。もう前回決まった企画で進んでいます。今さら変更なんて……」
無茶苦茶だ。
クッキーの発注も袋の発注も既に終わり、納品予定日も決まっているのに。
「……無理です」
「『桃源』とはこれからも友好的な関係を築いていく必要があるんだ。なんとかならんか」
「そう言われましても……」
無理なものは、無理だ。
「頭から『出来ない』と決めつけるな。ここで無理をしてでも先方の要望に答えれば、今後の信頼関係に繋がるんだぞ!」
「しかし……」
「俺も手伝う。明日は取引先に頭下げて回るぞ!」
「……分かりました」
明日は土曜日だ。
これでまた休日がつぶれる。
もう、数ヵ月は休みをとっていない。
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