23人が本棚に入れています
本棚に追加
/72ページ
丸い中の一ミリも満たない点で、線と点が交わり、偶然ここにいて集団になって存在してる。
「楓(かえで)! はよ~ってまた変えたのか髪の色」
「あ……啓介」
こいつとは偶然というより、奇遇とか腐れ縁とかそういうのだ。絶対必然じゃない。
初めて会った時からなにかと俺に絡み、なにかと世話を焼いてくる。
おまえはおかんかって……
たまたま父親同士が『親友』で隣の家でたまたま同じ小・中学校で、偶然! 同じ高校なだけだ。『親友』の山名啓介(やまなけいすけ)。
「あ……じゃないわ! つーかその色やばくねぇ?」
「騒つくんだよ……心が……」
「でた! おセンチ楓!」
「なんだよおセンチって」
「センチメンタルだよ…お松に見つかったらやばいぞ! それ!」
少し肌寒く感じる風と普段見る落葉樹が色づき始める頃、あの時の記憶に引き戻されてしまう。それはとても鮮やかで、匂いまで思い出してしまう程。
あれはきっと偶然じゃない。俺にとって必然だったんだと思う。
「そういや……彼女は?」
「え? あ……昨日、別れた」
「はぁ?! 聞いてない!! じゃ~~なんで俺を置いていったんだよ!」
「悪い…今言ったし」
「えぇ! なんで? あんな可愛かったじゃん!」
「振ったんじゃい……振られた 」
「あ~~またやらかしたんか?」
「ん……キスしたんだけどなんか違うくて、そっから考え事してたら彼女怒ってさ。平手打ちパーンみたいな」
悪戯で触れた感触は残ったままで、好きな子としたキスはそれを超える熱を感じなかった。
最初のコメントを投稿しよう!