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「はぁ……おまえさぁ、また運命とか必然とか哲学みたいなこと考えてたのかよ」
「……いいだろ別に」
「昔の初恋だか知らねぇけど、俺ら高二男子だぜぇ? こう……理屈とかそうゆ~のじゃなくてさぁ~~衝動的みたいの? おまえにはないのか」
「おまえと一緒にするな。そんなんじゃないって」
初恋? 相手は男だっつーの!
ただあの時、感じた熱をもう一度感じたい。好きな相手だったら、それを越えた熱を感じるんじゃないかって思ったんだ。
いつも今度こそって思うのに、期待は虚しくなにも感じないどころか一気に冷めてしまう。じゃあれはなんだったんだろう……
通学時間三十分弱、只今予鈴十分前。正門までゆっくり歩いていく。先を行く同じクラスの奴らに、啓介と同じ様な事を言われ笑って誤魔化した。
朝っぱらから元気溌剌と挨拶している声が聞こえる。その声を聞いた途端うんざりした気分になった。
「やばいんじゃない? あれお松じゃん!」
分かるよ嫌でも……
進路指導の松尾先生(通称お松)。如何にも体育会系を表したような先生なのだが、三十代のおっさんなのに、すらりとしたイケメンなのだ。たがら嫌味を込めて、お松とふざけて呼んでいる(誰が言い出したのかは不明)。
正門二メートル辺りから俺を見るなり叫んだ。
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