約束のその時分桜はいつぞやの花弁を散らす

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あの日から私は毎日裏庭へと通い続けた。 彼は寝ていることが多くなった。 隣に寝転ぶ私。 猫はいつも私か佐倉の上で寝ている。 最近じゃあ私はもう佐倉に触れられなくなった。 手は宙をつかむ。 もう触れられないのだ。こういう時にあぁ人間じゃなかったんだと改めて思う。 ただ猫だけは私にも佐倉にも触れられる。 私はそれが不思議だった。 黒い猫。 私はここに通う前からどこかでみたことがある。毎日、毎日どこかで見た気がする。 よくは思い出せないけど。 気のせいなのかもしれないけど。 もうすぐ桜が咲き誇る季節。 都内ではもう三分咲きほどとニュースでみた。 あの家へ帰ろう。 懐かしく自然溢れるあの家へ。 私は新幹線と電車の切符を見つめて大きく息を吸った。
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