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突然ぴたりと呼吸の苦しさがなくなる。水の底に足がついた。
気が付けば一番下まで来ていたんだ。
水の底から上を見上げる。
三日月の光が優しく天を照らしていた。
悲しいが、悪くない景色だった。
ずっとここにいれば幸せなのかもしれないとして。
でもここに居てはいけないんだ。
ここにはいられないんだ。
なんでこんなに残酷なんだ。
残虐すぎて、涙が浮上する。
私は進むしか道は無いようで。
腕を不器用に動かす。体が浮く。
もがきながら、水面を目指し、
そして重い体を陸に押し上げた。
私はまるで陸に打ち上げられた魚のようだ。
溜息をつく。水の精霊の声はもう聞こえない。
私はゆっくり歩みだした。
恐怖は当分続くだろう。
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