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その水場から離れてだいぶ経つ。
足が棒になるようだったので仕方なくそこに腰かける。
やけに静かだ。空を見上げる。
おや。
三日月かと思っていたそれは、歪んだ目だった。
どうも私を見下ろして笑っているようだ。
道理で視線を感じると思ったが。そのせいだったか。
空から見られているなら逃げ場はないだろう。
すべての生命はこの視線に耐えている。
私は脆いからこれだけでも崩れてしまいたいのに。
どうしてこの世界で正気を保って生きてられるのか。
自分だけが意識している。これだからフェアではないなと。
この仕組みは不満である。今更悪態をついても仕方ないのだが。
一拍の間を置いて。疑問符を浮かべた。
待て。この下劣な月以上に幾多もの視線を感じる。
どこだ。どこにいる。
探しても後悔するだけだろうに、私は視線の元を追う。
有った。
この花畑だ。
向日葵達が、私を見ている。
那由多阿僧祇(なゆたあそうぎ)の瞳が私を見ている。
太陽が汚辱された世界で、咲き誇ってる。
そいつらが一斉に顔を私に向けている。
頭の先からつま先まで、毛が逆立つ。
今は蒸し暑い季節じゃなかったのか。どうしてこんなにも冷えている。
冷えている。視線が。
これはあれらが言ったように、かつて聞いてきたように、
犯した罪のせいだと言うのなら。
私はそこに立っているだけで苦しめられると。
私は、どうして。どうして。
今すぐ得たものを捨ててしまおうか。
捨てたなら処刑されて終わるかもしれないのに。
でも踏みにじることはできないのは。
ようやく手に入れた甘味を手放せないのは。
狂気を自覚してしまって、飲まれずにいるのは。
×しているから
それ以外の答えが見つから無くて。
ああ、もう。枯れてしまいたいよ。
目玉は私を今日も責めたてる。
向日葵達は笑っているのだろう。
それも、ニタニタと。どうせあいつらと同じだ。
一度目を閉じる。強く閉じる。ひとつ呼吸を置く。
思いこめ。目玉は、そこに無いと。
そして目を開く。
お願い。笑わないで。
私は、頑張ってみせるから。
救いを、どうか。
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