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目を開けば、そこには目玉などなかった。
優雅に咲き誇る向日葵が一面に広がっているだけだった。
なんだ。そうか。
夜に咲く向日葵は不気味にも綺麗なものだったんだ。
宵闇に浮かぶ黄色が星々に似てなくもない。
もう空は濁っているから、星とやらがどんなものだか二度と見れないが。
でも、綺麗だったのは覚えているんだ。確かにそこに有ったんだ。
地上に降り立つ星々。
よかった。安心した。
全てを拒絶した私にもこんな感性が残っていたのかと微々に驚く。
安心した矢先、腕を何かが掴む。
そこを見れば緑。蔓が絡みついてきていた。
勘弁してくれ。私に安息の地は無いのか。
蔓は全身に巻き付き、きつく締める。
ギリギリと。骨が軋むような音がした。
これでは腕に切り傷以外の跡が残るんじゃないかと少し心配になった。
苦しい。体が締め付けられて、痛みよりも、呼吸がしづらいな、と。
多分、もう痛みは怖く無いんだ。散々に痛みなら経験してきた。
ただ、苦しいのがけが、いつも悲しくて。
空気がそこにあるのに吸えないことの虚しさよ。
望んでいたんだろう?誰かの声。
そこ声を聞いた矢先、
ブツン、すべての音が途絶える。
耳に、蔓が入ってきたのだ。
奥へ、奥へ。
バチンとした激痛と共に鼓膜を破って、進むは脳髄へ。
侵食される。私は侵食される。
×に、侵食される。
脳みそをかきまわされる。
そんなにぐちゃぐちゃしないでください。
気持ち悪くなって、私の口から吐瀉物。
食べたものなどなかったのに。
やけに赤い。これは内臓か。
私のちっぽけな内臓が。吐き出される。
体内に入ってからっぽの私を埋めつくす蔓。
それは内側からびきびきと皮を破り、
私の肉体を真っ二つに引き裂いた。
血が噴水のように高く放出された。
でも、きっと、私は、終わらない。
これが、×すということなんだ。
いたずらに残酷な向日葵は月光に輝いた。
睨み返してやりたいよ。
もう、今更逃げても仕方ないのかもしれない。
少しずつ受け入れるしかないのかもしれない。
諦めに近いものが沸々と込み上げてきて。
そう思うことが汚染されていることだと理解していても。
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