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すっかり舌のピアスが体の一部の様に馴染んだ頃、私の地元から警察の人が工房兼自宅を訪ねて来た。
話を聞くと、6年前の全焼火事に一家殺人後の放火の疑いが浮上したのだとか。
そんな事、今更訊ねられても何も話せる事はないというのに。
私は仕事で家に居なかった。
帰宅したら、家その他が火事で無くなっていた。
ただそれだけ。
その場にいた訳ではないのに、何を話せと。
困った様子の私に、同様、困った顔をした刑事が言う。
「いやね、僕もあれは事故だと思ってるんですがねえ…
何もないのにどうしても事件にしたがる人が居るんですよ。
まあ、取り敢えず体裁だけなんで…すみません。」
「はあ…。
事件なんですか…?
こんなに………、6年も経ってから?
私も、兎に角帰宅して驚いたとしか言いようが…
申し訳ないんですが…当時余りにびっくりして…
未だに、まるで靄でもかかっているような感じで…思い出せる事は何もないと思います…。」
「ですよねえ…
家も家族も失うなんて事…信じられない位ショックでしょうしねえ…」
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