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刑事は、当時の事をさらりとなぞるように簡単に話し、私が何も判らない様子を見てあっさりと帰って行った。
6年前の事故を、こうして調べなくてはいけないらしい警察も大変だなと思う。
事故で終わったはずの事を今更蒸し返して、どうしようと言うのだろう。
周辺にまで被害があった訳でない。
私の血縁類と家が無くなった事で困る人も誰も居ない。
例えば、当時何かがあったのだとして…
それを探った所で、何も意味はないと思うのだけれど。
私は、口の中の炎をカチカチ鳴らしながら、細工作業ですっかり乾いた疲れ目をぎゅっと押える。
そうすると火の女神様が口の中で鉄を鍛えている気がする。
あれは何だろう。
私の大好きな銀色のハサミだ。
今はもう、血で赤黒く錆び付いて切れなくなってしまったけれど。
ふと、楽しくなって口の端が吊り上がる。
「すべて
燃えて無くなった。」
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