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私は現在、G県のS市に住んで居る。
ここは刃物のまちだ。
私は子供の頃から刃物が好きだった。
派手な物を身に着ける事も持つことも許されなかった私には、光るものなら何でも美しく見えて、そんな中で唯一与えられた光るものがハサミやカッターなどの文房具だった。
特に私はハサミが好きで、手芸用の裁ちバサミ等は開いた刃を電球にかざして動かすと、ミラーボールでもあるかのようにテーブルや壁にまで光が飛ぶ。
銀色の光は地味でマットな私にすら輝きを与えてくれるので、嬉しかった。
その光にはしゃいでハサミを振り回し、指からふっ飛ばして壁に穴を開けてしまった時には大変叱られたが、それでも私がハサミを取り上げられることが無かったのは、それが「学校で必要な物」という特権を持っていたからだろう。
私には、その些細な特権が自由の象徴のように思えて、よりハサミを愛おしく感じた。
それをきっかけに、私は銀色の刃物の虜になり…
子供の頃は鍛冶師になりたかった。
何かの本で、鍛冶の神様は女性なので、女が鍛冶場に立つことを嫌うと読み落胆した。
実際には女性の鍛冶師も僅かながら居るようなのだけれど…
あの美しい銀色を生み出す神様に嫌われしまうのは嫌だったので、すっきりと諦めた。
代わりに、鍛冶に使われる鉱物の研究をしたいと思っていたのだけれど。
鉱物学に強いと有名だった京都大に入る事も出来なかったので、何でも良いから金属や石等の光るものに関わる仕事がしたいと、長年隠れて彫金を勉強し、足枷が無くなった現在はネットでオーダーを受け、アクセサリーを作る仕事をしている。
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