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この仕事をはじめてから、秋田に銀線細工という伝統工芸がある事を知り、何れ秋田にも行けたら良いと考えている所だ。
刃物からは少し離れてしまったけれど、私の周囲は兎に角キラキラしたもので一杯なので幸せだと思う。
ただ、自分で作った物が身に着けられないのは宣伝の方法が減るという点で少し不便を感じている。
体質ばかりはどうにもならないのだろうが、指輪やネックレス、ブレスレットが無理でも、せめてピアス位は着けられないものかと考えた時、急に忘れようとしていた煩わしい記憶が私の中から噴き出して来て、ピアスホールを開けるという些細な事すら躊躇わせる。
「親からもらった体に傷をつける事は許さない」と高校時代、繰り返し言われた事。
確かにそれは、もっともなのだけれど…
ピアスを開けるかどうか位、いい加減自分で選びたい。
何度も、ピアスホールを開けようと試みたが、その都度呪いの様に頭の中に親の顔が浮かんで手が止まる。
揉める度、髪を引っ掴んで床を引きずられた記憶。
歯が折れ、口の中を切る程頬を叩かれた記憶。
冬場に、外の物置に閉じ込められて凍死しかけた記憶。
恐怖ばかりが未だ足元に絡みつく。
いつになれば、あの火の中に消え去った筈の亡霊共が居なくなるのだろう。
火の女神様は、私が男だったら嫌な記憶まで全て焼き払ってくれただろうか?
そんな馬鹿げた事を考えてしまう。
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