第一章

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女神様は私に言った。  「約束通り、あなたの一番の望みを叶えて差し上げましょう。しかし、そのためには私のミッションを果たさなければなりません。ミッションはあなたにとっては大変なこともありますが、私との約束を忘れない限り、あなたは全てのものを超越し、私のような存在になることができるのです。このことは魂に刻み付けておきます。決して忘れることがないように・・・」 「柊子、柊子!」   誰かが、私の名前を呼んでいる。 「大丈夫? 柊子? 目を覚ましてちょうだい。」 「んん? 何?」 「柊子! 気がついた? 一体、どうしちゃったの? ママ、心配したじゃない?」 「どうしたの? ママ。」 「どうしたのじゃないわよ。あなた、さっき階段から派手に転げ落ちてきたんだから。」 「痛いっ」  起き上がろうとすると、激しい痛みが私の身体に走った。 「階段から落ちたの? 私。」 「そうよ。その瞬間は目撃してないけど、この状況は絶対そうでしょ? 大きな音も聞こえたし。」 「全く、記憶にないよ。」 「きっと、頭も打ったんでしょ。 でも、意識が戻って良かったわ。もう、心配したんだから。一応病院に行って検査はしてもらいましょ。身体だって痛いでしょ? ママ、今日お休みもらってて良かったわ。立つことはできる?」 「うん、痛いけど何とか。」 「じゃあ、ママも準備するからラクな姿勢でここで待ってて。」 「わかった。」  何で階段から落ちたんだろう? 私は、記憶を辿った。  今は、高校一年の夏休み。今日は・・・えっと、そうだ! 今日は、珍しく予定もなくママも有休をとっていたので、二人で美味しいイタリアンのランチを食べに行こうということになっていたのだ。  それで・・・ あ!思いだした。そう、イギリスへ留学したミキちゃんからの手紙が届いてるはずだから、ポストへ確認に行こうとしてたんだ。その途中で階段を踏み外しちゃったのね。多分・・・。  立てるし、手足も動かせるということは骨折はしてないと思うけど、それでも身体中が痛い。激しい打ち身かな? 「柊子、用意できたから行くわよ。」 ママが、軽めの化粧をしてバッグを持って現れた。 「ママの肩に捕まって。ゆっくりでいいから。」 「うん。」 私はママの肩につかまり、痛む足をひきづりながら、ママの愛車のベンツの助手席に座り、病院へと向かった。  
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