第一章

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「でも良かったわね、打ち身だけで。頭が異常なしでホント良かったわ。今日から一週間くらいは痛みが続くかもしれないけど。でも今が夏休みで良かったわね?。今日は一日ゆっくりなさい。ママは、お昼からデパートに行ってくるけど、大丈夫?」 「うん、痛み止めのおかげでさっきよりは少しマシになってきたし、おウチにいて何もしなければ大丈夫だと思う。トイレいも行けそうだし。いいよ、気にしないで行ってきて。」 「ごめんね。今日中にどうしても買わないといけないものがあるの。ホラ、週末に職場の女の子の結婚式にお呼ばれしてるでしょ? それに着ていくドレスを新調しないといけないから。」 「あ?、里穂さんの結婚式ね。いいよ、気にしないでホント大丈夫だから。行って来て。帰りにルーアンのケーキ買ってきてくれたらいいから(笑)」 「わかったわ。でも、ダイエットはどうなったの? 夏までには痩せるって言ってなかった?」 「明日からやるから、今日はいいの! いつものチョコレートケーキとシフォンケーキね。」 「はいはい、じゃ、ママ準備してくるから。自分が食べた物だけシンクに入れておいてね。」 「うん。あ、後、ママ、ポスト見て来て。ミキちゃんから手紙が届いてると思うの。」 「わかったわ。」  少ししてママが戻ってきた。 「届いてたわよ。じゃ、ママ支度して出かけるから。」 「ありがとう。」  しばらくすると、ママが再び現れた。上下が揃ったツーピースで身を固め、時計とアクセサリー、ハンドバッグはカルティエで合わせている。髪の毛は夜会巻き風にセットされ、オーデコロンの甘い香りが漂よわせている。 「柊子、階段を降りる時は本当に気をつけてね。じゃ、ママ行ってくるから。夕方には帰ってくるわ。」 「はーい、いってらっしゃい。」  ママは会社の社長をやっている。ネイルとかエステとか、岩盤浴とかの美容関係の仕事だ。会社はとても順調のようで、ママはいつも今日みたいに、自分な好きな洋服やアクセサリーで身を固め、ベンツに乗って出社している。  美容関係の仕事をしているからか、44歳ながら20歳の時のスタイルを維持していて、お肌にも気を遣っているから、そういう成金風な格好がイヤミに映らない。娘の私から見ても、いつもキマッているなと思う程で、自慢のママだ。  
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