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「じゃ、そういうことで」
再び踵を返し、少年はその場から立ち去ろうとする。
「いや、なぜ今の流れでそうなる!?」
またもや襟首を掴まれ、ダンボール箱の前に連れてこられた。
「まだ何か用?」
「いや、普通こうなった理由を聞くとか、可哀想だから家に連れて帰るとか、そういうものだろう!」
「あー……じゃあ何でこうなったの?」
後者の選択肢はそもそも頭になかったので、とりあえず前者の方を尋ねてみる。
「捨てられたのだ」
「そうか。いい飼い主に拾ってもらえるといいな。それじゃ」
三度目の逃亡を謀ろうとするが、今度は踵を返す前にがっちりと胸元を掴まれた。
「話を聞け!」
「これ以上何を聞けって?」
「だから、捨てられた理由を聞くとか、いろいろあるだろう!」
「えー、いいよそんなの。人様の家庭の事情に首突っ込みたくないし。よく言うだろ?他所は他所、うちはうちって」
「な、なんて都合のいい解釈を!この薄情者!」
面倒くさそうな少年を必死に引きとめながら、少女は大きな声でそう言った。近所迷惑になってるんじゃないかと思いながらも、少年は仕方なしに尋ねる。
「じゃあ、何で捨てられたの?」
すると、少女は陰鬱そうな表情で俯きながら、重そうに口を開いた。
「実はな、これには語るも涙、聞くにも涙の深い事情が……」
「あ、長くなりそうなら要約頼む」
「えぇー……」
あまりにノリの悪い少年に、少女は疲れたような顔をする。疲れるのはこっちなんだけどな、と少年は内心呟いた。
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