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さらに語り続けようとする少女を、少年は止めた。何となくではあるが、この後の話の続きが読めてしまったのだ。そのため、少年は先回りしてこう尋ねた。
「結局、何人くらいの人に声をかけられたの?」
「む?まあ、通算で二十人くらいだな。ちなみにそのうち十五人が老人だった。残りの五人は変態だった」
「老人と変態しかいねーじゃねーか。この国大丈夫か」
「少子高齢化というやつだな」
「少し違う」
嘆かわしい日本の現状に、少年は深いため息を吐いた。そんな少年の肩を、少女がポンポンと叩く。
「そして、半ば自棄になっていたところに現れたのが、キミというわけだ」
嫌な予感がして、少年は後ずさる。だが、少女の手は少年の肩をがっちりと掴んでおり、逃がしてくれる気配がない。
「ようやく現れた、普通の人!凡人!ザ・一般人!私は、キミに付いていくことに決めたぞ!」
「勝手に決めるなっての。僕のアパート、ペット飼えないんだよ」
「そ、そこを何とか!ちゃんと面倒みるから!」
「何で『捨て犬拾って来ちゃった子供』みたいなこと言ってんだよ。とにかく、僕には無理だから!他をあたってくれ!」
無情に少女の手を振り払い、彼は踵を返してツカツカと進みだす。途中で少女に止められるのではないかと内心思っていたが、意外と大人しく引き下がったらしく、ついて来る事はなかった。
ちらっと後ろを振り返ると、寂しそうな表情でダンボール箱の中に戻る少女が見えた。少し強く言い過ぎただろうかと思いながら、少年は家路に着いた。
―2―
少年が自分のアパートでくつろいでいると、部屋のチャイムが鳴った。一瞬普通に出ようとするが、ひょっとしたら先ほどの少女が待ち構えているのではないかと思い、念のためドアスコープから外を覗く。そこに立っていたのは、50に差し掛かるかどうかくらいのオバサンだった。
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