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「その人物が、彼らを一人で倒したようです」
「……え?それマジですか?」
「マジです」
戸惑う少年に向かって、女性はいたってまじめな顔で頷く。
「だってこれ、こんな……」
「こんな、ブタさんみたいな顔してる人にみんなやられたの?変なのー」
そう言いながら、少女は画面を指でいじる。すると、画面の人物の顔がドアップになり、少年は思わず吹き出しそうになる。
「ちょ、ちょっとやめて?面白いから」
少年は咳払いをした後で表情を戻すと、タブレットを女性へ返した。
「では、俺らの仕事は……」
「ええ。この人物、そして秋崎深紅を暗殺することですわ」
感情を一切感じさせない顔で、女性は淡々と言った。
「魔術は、我々由緒ある血を継ぐ者のみが、使うべきモノ。おいそれと、どこの馬の骨とも知れぬ連中が、使ってよいものではないのです」
一度言葉を切った後で、女性は「頼めますね?」と尋ねる。是非を問わせぬ口調に、少年は微笑んだ。
「ええ、お任せください。我々兄妹が、あなたのご希望に添えなかったことなど、ないでしょう?」
そう答える少年の隣で、少女は再びハサミを手に取る。少女はそれを、先ほど作った人型の首にあてがった。
「…We all fall dawn!」
少女は歌うように言いながら、ハサミを持った右手に力をこめる。チョキン、という音と共に、人型は首を失った。
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