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「あ、あたし、やっぱり先に学校行くわ!こんな不潔な人となんか、一緒に行けないもの!」
そう口走ってから、深紅は慌てて口を抑える。それを見て、シロはニヤニヤと微笑んだ。
「なるほど。ウツギ、このウブな少女は、キミと一緒に学校に行きたくて、わざわざここを訪れたらしいぞ?」
「そうなのか?てっきり、昨日のお礼とか、そういう話だと思ってたんだが」
彼らの会話を聞きながら、深紅はアワアワとパニックに陥っている。その顔は耳まで真っ赤で、今にも頭から湯気を出しそうだった。
「じゃ、じゃあ、あたしはこれで……!」
彼女は、逃げるようにして踵を返す。その瞬間、シロの眼帯を着けていないほうの左目が、キラーンと光った。
「あ!足が滑ったーっ!」
そう叫びながら跳躍すると、空木の背中に思い切り跳び蹴りを叩き込む。
「ぐふっ!?」
「きゃっ!?」
空木は、前にいた深紅のことを巻き込みながら跳ね飛ばされる。彼はそのまま、思い切り前に倒れ込んだ。
「くっ……シロ、お前一体何を……」
そう言いながら起き上がろうとする彼は、目と鼻の先に深紅の顔があることに気づく。空木は、深紅を押し倒し、その上に乗るような形になっていたのだ。
「あ……う、ウツギ……」
顔を真っ赤にしながら、深紅は呟く。その吐息が感じられるほどに、互いの距離は近かった。
「くっくっく、文字通り背中を押してやったぞ。まあ、後は若い二人でごゆっくり……」
ニヤニヤと笑いながら、シロは玄関の扉をバタンと閉める。アパートの廊下に取り残されたのは、空木と深紅の二人だけになった。
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