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「こら、屋上でそんな風にはしゃいでいると、危ないよ」
少年がそう言うと、少女は愉快そうに微笑む。
「だって、今夜やるんでしょ?待ちきれないんだもん!」
少女は少年の隣に並び立つと、どこからかハサミを取り出す。眼下を歩く深紅の姿にハサミを重ねると、彼女はチョキチョキという音を鳴らした。
「えへへ、楽しみ!」
「まったく、キミは血の気が多いな、コレット」
少年は微笑みながら、彼女の頭を撫でた。
「ねえジョルジュ、隣の男の子はどうするの?」
「彼には、人質になってもらう。この間の事件を妨害してきた白い髪の奴が、あいつと同じところに住んでいるようなんだ」
彼がそう説明すると、少女は少年の服の裾を引っ張った。
「ねぇねぇ、これ終わったら、あの男の子の方はコレットが貰ってもいい?ねぇ、いいでしょ?」
クリクリとした目でねだるように言いながら、彼女は首を傾げる。少年は、困ったように笑いながら頷いた。
「調べたところによると、あいつは魔術や『魔術師殺し』について知ってしまっているらしい。どうせ、後々始末しなければならないだろう。一人くらいなら、あの人も許してくれるさ」
「やった!ありがとう!ジョルジュ大好き!」
少女は、そう言いながら少年に抱きつく。
「まったく、キミに目をつけられるなんて、あいつも不幸だね。どうせ、いつもの人形作りだろう?」
「うん!コレットね、ちょうど黒い目が欲しかったんだぁ!あの男の子の目、今作ってる人形にちょうど良さそうなの!」
少年のことを見上げながら、少女はキラキラと目を輝かせる。少年はそのブロンドの髪を、優しく撫でた。
「それじゃあ、そろそろ行こうか」
「うん!」
月明かりが照らす夜空の下、二つの影が動き出す。コツ、コツという彼らの足音が、ビルの屋上から消えていった。
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