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「さぁーせんでした!」
いいよ、とおれは笑ってボールを放ってやる。よくあることだ。バレー部みたいな、パワー全開でボールを叩きつけてる部活ならなおさら。
「びびりましたねー」
後輩が言い、おれも笑う。
「そうだな、何回あっても慣れないなあ」
なあ、と話しかけようとして、岡島が妙に静かなことに気づく。
「岡島?」
後頭部に呼びかけるが、返事がない。どこを見てるのかと岡島の向いている方向を見ると、さっきのボールを打ったらしいバレー部員が、バレーのネットの向こうからこっちを見ている。おれと目が合うと、さぁーせんでしたっ、とさっきの球拾いと同じように叫んで頭を下げ、アタックの練習に並んでいるらしい列の後ろへと下がっていった。
「おい、睨んでやるなよ岡島。わざとじゃないって」
「……はは。そうだな」
振り返って笑った岡島は、もういつもの岡島だった。
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