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キッチンのラグマットの上で抱き合いながら、しばらくの間夢中でキスをした。
張り詰めた空気のせいで、硬くなった俺の身体を解すように、麻酔のような甘いキスを何度も繰り返す。
「…桂ちゃん、やる時、言ってよ?」
「ん……」
Tシャツの裾から入ってきて、脇腹や腰を撫でる冷たい手を抑える事もせず、唇から顎を伝って徐々に喉元に下りてくる愛撫のような優しいにそれに身を委ね、覚悟を決めて目を閉じた。
「大好き、オト…」
「俺も、だよ……」
「オト……ごめん」
「あぁっ!くっ……はぁっ」
耳元で低く囁いた桂太が、俺の首筋をゆっくりと舐め上げた。
顔を背け首筋を晒したその直後、鋭い痛みが走り全身が痺れて硬直した。
「ん…っ、はぁっ…んぁぁっ……」
チュルルル……
ゴク……ゴク……
桂太が喉を鳴らす。
深く牙を突き刺して、そこから溢れる俺の血を吸い上げ飲み込んでいく。
「あ、…あ……は…っ」
ゴクン……ゴクン……
また美味そうに飲むね?
よっぽど渇いてたんだな。夢中で吸い付いて離れない。
「っ……桂…ちゃ…」
「ん…、…んふ…」
手足の感覚がない。まるで力が入らない。
辛うじて桂太に背中を支えられ体を起こしてはいたが、血液だけじゃない、何もかもが自分の体から吸い取られていくような気がした。
「ありがと、オト……」
抜け殻になった俺を桂太がしっかりと抱きかかえる。
体温は感じない。だけど明らかに生気が甦った力強い腕に体を預けぼんやりと滲む視界で最後、満足そうに目を細めて笑う桂太を見た。
よかった。桂太が生きてりゃそれでいい。
俺がコイツの腹を満たしてやったんだという悦びに似た痛みの中で、俺は安心して深い眠りに就いた。
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