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「桂ちゃん、俺あんたが好きよ?」
「お、俺だって……好きだよ」
「俺がこんな姿でも?」
「あ、当たり前じゃん!」
「フフ、ありがと……」
笑った音弥の口元から、尖った牙と赤い舌が見えた。
白く透き通るような頬に浮かべた微笑。その妖艶な表情と、嬉しそうに細めた瞳に吸い寄せられるように唇を重ねた。
「んっ……」
貪るようなキスに思わず息を呑む。
舌を絡めながら、音弥に生えた牙を舌で撫でると、甘い吐息が聞こえてきた。
いいよ、あげる。
俺の血、あげるから……
「はぁ…」と息を吐いた音弥の唇が、少しずつ喉に下がっていく。
目を閉じてソファの背凭れに体を預けて、首筋を這い回る舌に、されるがままに身を委ねた。
「んっ…、オト…キモチ…」
諦めにも似た、心地良い快感が俺の頭をぼんやりさせた。
……だけど、何で?
「どうしてこんな事になっちゃったのかな…」
そう、誰に聞くわけでもなく呟いた。
二人とも普通の人間だったのに何で? って。
すると音弥が俺の耳元で言ったんだ。「覚えてないの?」って。
「覚えてないって、何を?」
「一週間前、洞窟で言ったじゃない……」
洞窟? 一週間前、ロケで行った?
「“吸われてみたい”って」
「…え?」
俺、そんな事言った?
「あ!」
思い出した。
そうだ、あの時…
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