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『もしもし、オト? 俺だけど』
それは、ある夜の事。
枕元に置いてあったスマートフォンが突然鳴り響いたのは深夜2時過ぎ。所謂“草木も眠る丑三つ時”という時間帯だった。
相手は幼馴染みの岸桂太(きしけいた)で、聞き慣れた声ではあったが、深い眠りに落ちる瞬間に耳元で鳴った電子音に、必要以上に心拍数が上がっていた。
『オト、やべぇ。俺マジでやべぇ』
「何?今何時だと思ってんだよ?」
桂太の声は興奮気味で、だけど眠気がピークだった俺はいつもよりぶっきらぼうに会話する。
『あのさぁ、俺明日? つか今日? 仕事休む』
明日、じゃなくて、もう日付を跨いでるから今日。
今日も桂太は昼からテレビ番組の収録があるはずだ。
芸能界なんて所は俺にはよく分からないけど、普通の会社員の俺と違って、具合が悪いから休みます、なんてそう簡単に言える世界じゃない事くらいは知っていた。
だから俺は、桂太が数ヶ月前に過労で倒れた時の事を思い出し、とりあえず話を聞く事にした。
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