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「体調でも悪いの? 大丈夫かよ?」
『うん、体調は悪くないんだけど。
疲れてんのかなぁ? 何かおかしいんだ。顔? っつーか目? っつーか口の辺り?』
「何だろな、さっぱり分かんない。顔がおかしいのは元々でしょ?」
『はぁ?! 失礼だな、お前ひどくね?』
電話の向こうの桂太はいつもみたいに笑っていて、とりあえず今すぐどうこうなる問題でもないのだろうと判断して、それならそれで早々に電話を切ろうと試みる。
「ねぇ桂ちゃん、その話今じゃないとダメなの? 急ぎ?」
『急ぎ、っつーかマジで助けてよオト、今から来れない?』
「は? 今から?」
『そ、今から』
桂太の突飛な申し出に、俺は深いため息を吐いた。
昔からコイツはこうだ。俺にだけは傍若無人に振る舞う。
「冗談だろ、寝ろって」
『眠れない、喉超渇くし』
「何か飲めば?」
『飲んだよ、だけどダメなんだよ、何飲んでも違うんだって!』
「知らないよ。寝酒にビールでも飲んだら? 俺もう寝るよ、おやすみ」
『ちょ、待って! 死んじゃうかも! 喉が渇いて死んじゃうかも!』
「喉が渇いて死ぬ人なんか聞いたことないわ。じゃあね、眠いから切るよ?」
『オイ! 待てって! 冷たいなお前』
(ピッ…)
電話を切ってスマートフォンを枕元に放り投げて、横になり毛布を頭から被る。
冗談じゃありませんよ。
何時だと思ってんの? 顔がおかしいだ眠れないだ、喉渇いただ死んじゃうだって。
俺を何だと思ってんの? バカばかしい、寝るよ、俺は。
……。
とは言ったものの。
「……あ~っ、くっそぉ!」
寝ようと思って目を瞑っても結局ヤツが気になっちゃって。
仕方ないから寝間着のハーフパンツとTシャツのままポケットにスマートフォンと免許証だけ突っ込んで、車を飛ばしてヤツのマンションに向かった。
そう、行って様子を見たら、すぐに帰るつもりでね。
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