─Deep sleep─

4/12
前へ
/20ページ
次へ
数年前に雑誌モデルから俳優に転身した桂太は、今やテレビドラマやバラエティー番組には欠かせない存在だった。 モデル上がりのせいか、チャラチャラして見えるが実はその逆。 真面目で礼儀正しくて、どんなに忙しくても絶対に手を抜かない。 おまけに三十を過ぎた辺りから男としての魅力も増し、今年上半期のCM好感度アンケートでは5本の指に入るほどの、まさに“売れっ子”の芸能人だった。 しかしどんなに売れても気取らない性格は昔から変わらず、休みが合えば二人で飲みに行ったりして、割と頻繁に会っていた。 「あぁ、寒……」 車に乗り込んですぐ、寝間着のまま出て来た事を後悔した。 十月の下旬。上着がいらないくらいの昼間の暖かさが嘘みたいに肌寒い。 まぁいい。桂太に服を借りれば問題ない。 車で十五分の距離にある桂太のマンションは駅からも近いし、残業で遅くなって自宅へ帰るのが億劫な時なんかによく転がり込んでいたから、俺が着る服は何かしらある。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加